ヤシロウ ― 植物の性質が、そのまま灯りになるまで
 
ヤシロウは、アブラヤシの果実から得られる植物性ロウです。
アブラヤシは、赤道近くの強い日差しと雨のもとで育つ多年生植物で、
一年を通して高温多湿という環境に適応してきました。
 
その果実には、
熱にさらされても性質が変わりにくい脂質が多く蓄えられています。
これは、植物が自らの種を守り、
長い時間エネルギーを保つために選び取ってきた性質です。
 
ヤシロウは、
この果実由来の油を分別・精製することで得られます。
植物ロウの中では融点が高く、一般に 約52〜65℃。
火を灯しても急激に溶け出すことがなく、
必要な分だけが少しずつ液化します。
この植物としての性質が、
そのまま燃焼の安定につながります。
 
灯芯へ供給される燃料量が一定に保たれ、
炎の高さや燃え進み方に大きなばらつきが出にくい。
それが、ヤシロウの特徴です。
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高澤ろうそくがヤシロウを用いるのは、
この性質が日常の和ろうそくに向いているからです。
毎日の暮らしの中で、何度も火を灯す。
安定して燃えること。そのことが大切なのです。

ヤシロウは、
特別な表情を生むための素材ではありません。
和ろうそくの燃え方を考えるときの、
もっとも基本となるロウです。
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過酷な環境に適応してきた植物が、
暮らしの中で使われる灯りになる。
ヤシロウの物語は、
特別な場面ではなく、
まいにちの火の中にあります。
同じように灯り、
同じように役目を終える。
ヤシロウは、
和ろうそくの「基準」を形づくることで、
日常の灯りを静かに支え続けています。