素材へのこだわり

 
能登・輪島では、漆の木を植え、育てることから輪島塗りが始まります。
 
漆の植林は、工芸を支えるためであると同時に、里山に人の手を入れ続ける営みでもあります。
山が守られることで、漆も、暮らしも続いてきました。
漆ロウは、その漆の木が実を結んだあとに生まれる素材です。
塗料としての漆を採った後、残された恵みを活かし、灯りへとつなぐ。
そこには、使い切るのではなく巡らせるという考え方があります。
 
 
科学的に見ると、漆ロウは植物由来の脂肪酸エステルを主成分とし、
融点はおよそ50℃前後とされています。
燃焼時の反応は穏やかで、炎は落ち着いた挙動を示します。
この性質が、長く向き合う灯りとしての静かな光を生み出します。
 
漆の木が育ち、
漆が輪島塗りを支え、
実がロウとなり、
灯りとして人の手に渡る。
そして、その火を灯す人もまた、
この循環の中に静かに加わります。
漆ロウの和ろうそくに火を灯すことは、
能登の里山で続く植林の時間や、
輪島塗りを支えてきた営みに、
ささやかに関わることでもあります。
 
灯りは、山から生まれ、
人の手を経て、
また次の時間へと受け渡されていきます。
漆ロウは、能登の里山が今も生きていることを、
火を灯す人とともに伝える灯りです。